高速度鋼
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しばしば「ハイス」と呼ばれる高速度鋼(こうそくどこう、high-speed steel)は、工具鋼における高溫下での耐軟化性の低さを補い、より高速での金屬材料の切削を可能にする工具の材料とするべく開発された鋼である。高速度工具鋼(high-speed tool steel)とも呼ばれる。「ハイス」の呼稱は、「ハイスピード・スチール」が縮まったもので、また、HSSと略記される。日本國內では、安來鉄鋼合資會社(現、日立金屬安來工場)で1913年(大正2年)に坩堝製鋼により初めて高速度鋼の製造に成功している。これは、フレデリック・テイラー(Frederick Winslow Tayior)による1899年のテイラー・ホワイト鋼(高速度鋼)の創製より14年目のことである。その後、1919年(大正8年)に高速度刃物鋼(特許33675號)としてその存在を示したのである。
高速度鋼は、高溫下での硬さや耐軟化性を高めるべく、鋼にクロム、タングステン、モリブデン、バナジウムといった金屬成分を多量に添加したもので、焼入れ等の熱処理を施した後、研磨により成形して使用される。超硬合金と比較すると、耐摩耗性において劣るが靭性に富み、より高速切削を可能とした粉末冶金法によるこの合金の普及する以前には、金屬材料のあらゆる切削に用いられた。
今日では、粉末冶金法により組織の微細化やさらなる高合金化を図った「焼結高速度(工具)鋼」(粉末ハイス)や、物理気相蒸著(PVD)法による表面への窒化チタン(TiN)等の高耐磨耗性被膜の形成が盛んに行われており、これらを含めて超硬合金では靭性の不足する領域での金屬加工に用いられる工具、主にはドリルやエンドミル、金屬用鋸刃の材料として使われている。また、コバルトを添加した高速度鋼はとくに「コバルト・ハイス」と呼ばれ、より焼きもどし抵抗性や高溫硬さが高く、これは加工時により高溫に曝されるステンレス鋼の穴あけなどに使用される。
日本工業規格(JIS)においては、「JIS G4403」として13種の高速度鋼が規定されている。この中で高速度鋼は番號に先立つ記號「SKH」で識別されるが、これは、Steel、Kougu(工具)、High-speedのそれぞれ頭文字を取ったもので、その內のSKH2、SKH10、SKH51、SKH55の各鋼種が代表的である。
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